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一期一会のある暮らし
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「鍵」の話!

 人類は、いつ、どのようにして「鍵」という概念を、身に着けたのだろうか。と言うのも、人類にとってなぜ「鍵」が必要になったかが重要な問題だからだ。狩猟民族が、捕えた獲物を皆に等しく分け与えて生活しているのであれば、敢えて、食料を蓄える必要は無く、誰かに盗まれるリスクも無いだろう。しかし農耕民族のように、収穫できる時期が限定され、採れた穀物を保管しなければならないのならば、それを盗まれないように“倉庫”に入れ「鍵」を掛ける必要がある。
 紀元前2000年のエジプトで、初めて「鍵」が作り出されたのは王族達の富を守る目的もあっただろうが、穀物や塩の保管・管理が一番の目的だったようだ。これが中世のヨーロッパとなると、城塞都市の発展に見られるように、守るべきものが一つの都市全体という事になる。外敵から都市を守るために城壁が築かれ、そこに城門が作られ、その開閉には鉄や青銅で作られた「鍵」が必要となった。そして「鍵」はやがて、貴族の家や商店から一般民衆の住居まで、その“生命”や“安全”、“富”や“プライバシー”を守るために使われるようになった。このように人類が社会的に進化する過程で、必須とされたのが「鍵」だったのである。
 “カギ”と検索すると、「鍵」と「錠(錠前)」があり、「鍵」が凸で「錠」が凹の関係にある。この凸と凹を1セットとして、「鍵」と表現するのが一般的だ。世界最古の「鍵」は、上述のとおり紀元前2000年頃に作られた「エジプト錠」と呼ばれる木製のもので、現代の“ピンシリンダー錠”と原理は同じで、閂(かんぬき)に開けた数個の穴にピンを抜き差しすることによって開閉する仕組みだ。古代ローマ時代になると、現代の我々がよく目にする差し込んだ「鍵」を回して開閉する“ウォード錠”の元となる仕組みが発明され、以後これが一般的となる。日本最古の「鍵」は、1998年に大阪府の「野々上遺跡」から出土した、7世紀中頃の製作と推定される「海老錠」だ。奈良正倉院にも有る「海老錠」は、飛鳥時代に中国から伝わったとされ、驚く事に現代でも購入出来る「鍵」なのである。
 “機械”としての「鍵」は、時代の変化と共に“精神性の象徴”とも捉えられて行った。西欧では、「鍵」に宗教的な“権威”や“支配”の象徴という意味を持たせたり、聖書の「天国の扉」を開けるという概念と関連付けられて、重要なものとして認識されるようになった。また結婚する時、“家庭生活の全てを取り仕切る権利”の委譲として、「鍵」を夫から妻に手渡す習慣が生まれたらしい。婚約の印である“エンゲージリング”も、「鍵」から変化したものと言われる。それは、指輪を“Key to my heart(私の心の「鍵」)”として相手に渡すからで、実際に“エンゲージリング”自体に「鍵」を刻印するケースも有ったという。
 最後に、「鍵」の意味が更に多層化しているという話を一つ。問題を解決する“ヒント”の事を「鍵」と表現するが、これは解決への扉を開くという比喩だろう。また、生活全般でITの影響から逃れ得ない現代の我々にとって、そのIT社会における“プライバシー”を守る為に、必要不可欠なのが「パスワード」という「鍵」であり、顔認証や指紋認証などの生体を利用した「鍵」なのである。

文 国影 譲

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