いよいよ「Money」に関するコラムも最終回となった。今回は“お金”と“人の心”の内面的な関係について考えてみたい。つい最近“お金”に関する記事や広告を意識的に探してみた。するとまず「年収
300万円、掃除夫
の私(40歳)が、2億円を貯めた!」という広告が目に付いた。また、“宝くじ高額当選者の追跡調査”という記事によると“宝くじ高額当選者”の8割までが、当選後5年以内に賞金全額を使い果たしてしまっているのだそうだ。この“貯めた者”と“使い果たした者”という対照的な記事2題の中にこそ、実は“お金”と“人の心”の関係が如実に表われていると私は感じるのだが、読者の皆様は如何だろうか。
もともと“お金”自体にはきれいも汚いも無いはずである。ところが「浄財」と言った途端に“汗水たらして稼いだ貴重なお金”というニュアンスが有る。又、反対語として「あぶく銭」と言えば、努力もしないで手に入れた“価値の低いお金”というイメージが有るのではないか。そして、そのことが“お金”
の使い方にまで影響してくるようなのだ。更に、人は“お金”というものに対して各人それぞれ固有の価値観を持っている。ある人は、“お金”など重要なものではないと言いながら懸命に利殖の道を探っていたり、“お金”の使い方が汚いと非難されていたりする。またある人は“金が欲しいのに、金が貯まらない!”と連呼しながら、少しでも“お金”が手に入るとまるで敵(かたき)にでも出会ったように浪費したりする。これは“深層心理”として各人が個々に持っている“お金”に対する“価値観”や“スタンス”が行動に影響を与えているのだと思われる。やっかいなのは、
“深層心理”であるために往々にして自分自身もなかなか把握出来ないということだろう。 自分は本当は“お金”を貯めたいのに、幼い頃に両親が金銭的な理由から離婚してしまい、子供心に“お金”を憎むようになって、つい目の前からそれを消し去ろうと浪費してしまうとか、“お金”で人の心は動かないなどと公言しているのに、やはり幼い頃、母親が金銭的な苦労の末に倒れたのを見たために“お金”に異常な執着心を持ってしまった例等々。
“お金”とうまく付き合いフラットな関係を築くことがとても重要なのだが、まずは自分自身の中にある“お金”に対する“価値観”や“スタンス”を意識する必要がある。
昔から、貯蓄の要諦は、「入るを図って、出(いずる)を制す」だと言われる。収入の道(労働、投資、利殖)を開拓・拡大しながら、出費を極力抑えることしか“懐を暖かくする”近道は無いという先人の教えだ。そしてもう一つ、とても重要なことは“お金”に執着し過ぎたり、逆に
“お金”という存在を忌み嫌ったりしないことだ。“お金”を貯めることや、“お金”を投資すること、或は持っている
“お金”を増やすことは“善”であり、“労働”によって得る浄財と全く同等の価値を有する。そして最終的には、得た
“お金”をどのように有意義に使うかということに、その人の“人間性”が色濃く反映されるのである。
文 国影 譲
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