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言葉のルーツを訪ねて(上)

   「日本文化」は、なぜこんなに“しっとりとした情感”や“奥深い多面性”を持っているのだろうか。そこには、日本語の“語彙(単語)の豊富さ”や“言語表現の多様さ”が大きな影響を与えているのだと思う。そこでもう一度、私たちが日常的に何気なく使っている「言葉」のルーツを、訪ねてみようと考えた。

   五月上旬、読売新聞の「編集手帳」に“小袈裟(ちいげさ)”という言葉についての記事が載った。私たちが日頃よく使う“大袈裟(ささいな事を、実際以上に誇張すること)”の反対語として、“小袈裟(深刻な事を、ささいな事のように表現すること)”という言葉があるのだという。もともと“袈裟”は、僧侶が肩から掛ける布で、信徒から寄進された端切れを縫い合わせて作ったものだった。ところが、そんな質素なものだったはずの“袈裟”が、時代を経て僧侶の格式や権威を表す“権力の象徴”になっていったことから、“大袈裟”という言葉が生まれたらしい。ただ、これには異論もある。僧侶が自らの“教え”を多くの人々に伝えるには、“説法”によって人々の心を惹きつけねばならず、時に話を誇張したり、人の生死すら淡々と伝えたりする“方法論”が必要だった。この事を、僧侶の“袈裟”にかけて“大袈裟”、“小袈裟”と言うようになったのだという。

  毎年五月、六月頃になると、会社では“新入社員歓迎会”が行われたり、大学辺りでは“新入生歓迎コンパ”が開かれたりするらしい。先輩社員や上級生は、 新入社員や新入生を“手ぐすねを引いて”待っているという訳だ。この“手ぐすねを引く”は、弓道用語から来ているのをご存じだろうか。“くすね”と言うのは、松脂(まつやに)に少量の油を混ぜて煮て作る、弓道独特の接着剤である。 切れ易い“弦(つる)”に擦り付けて、これを強化するのに使われたりするのだが、特に弓手(ゆんで、左手のこと)に、この“くすね”を塗り付けることを“手ぐすねを引く”と言うのである。これは“弓返り”と言って、一本の矢を射ると弓がくるりと一回転してしまうのを防ぐために(いちいち弓返りしていたのでは、次の矢をつがえるのに時間が掛かり、攻撃が遅くなる!)行うのだ。この事から転じて、準備万端怠りなくして相手や機会を待つことを“手ぐすねを引く”と言うようになったのである。更にずばり正確な答えをした時などに、“正鵠(せいこく或はせいこう)を射た答え”などという表現をするが、“正鵠”とは、弓の的のど真ん中のことを指しており、“答え”の正確さを際立たせる時に使われる。

  “正義の味方”にコテンパンにやられた“悪漢”が、「覚えてろよ!」などと “捨てぜりふ”を残して立ち去る場面は、映画やドラマの中でもなかなかの見せ場だ。そしてこの“捨てぜりふ”とは、もともと歌舞伎の世界で使われた用語で、台本に書いてないことを、役者が即興でしゃべる“せりふ”のことであり、特に脅迫めいた内容を指す訳ではない。歌舞伎の臨場感を出すための演出としてこの“捨てぜりふ”は大変重要であり、大いに役者の力量が問われると言われている。歌舞伎から生まれた言葉は数多い。次回もゆっくりとご紹介することにしよう。(つづく)

文 国影 譲

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